no227.「旅程と費用」昭和レトロ“東京再発見”

蒸気機関車 地域
「旅程と費用」(財)日本交通公社

「旅程と費用」は昭和31年に発行された旅行案内書です。
昭和30年ころの全国の観光を主にした地域の情報が書かれています。

構成は、市政に基づき、人口や面積、交通案内から始まり、
市の位置、歴史、産業、観光地、特産などが紹介されます。
現在の旅行情報誌のようなものではなく、
地誌、風土記をともなった観光案内書といえるでしょう。

昭和の中期にあたる昭和30年ころの記録によって、
地域の資源を再発見することで、
参考になることは多いはずです。
この書籍に関する地域情報にご興味のある方は、
「お問合せ」からお問合せください。

案内書の巻末には広告が掲載され、多くは全国の宿で、
他にショッピングや観光箇所、交通機関などの広告です。
この広告の中に、「東京名所と名物の栞」があり、
本文と挿絵によるものです。
挿絵に書かれた一文を紹介します。
東京再発見としてお楽しみください。

「東京名所名物図絵」

「東京名所名物図絵」市川三郎作によるエッセイです。

「東京ほどよい所はない。
花の雲 鐘は上野が浅草か
と、春のかすみを揚莫に、上野の山の櫻狩り
から始まって、亀戸の藤、六義園のつつじ、さては
入谷の朝顔から、不忍の池の道の花、ホンと
上るは両国の大花大、大川端の月の出と、
お金のあるなしさえ気にかけなければ、食べ物
はうまし、人情は濃し、二時間も汽車に乗れ
ば、いてゆの里は海に山にお好み次第、度胸が
あるなら大相場を張るもよし、
風雅で、粋で、便利なところだ。
東都のれん会がひかえている
ので、みやけに迷う野暮
もない。
江戸の味なら、意装
なら、こうなくては
かなわぬと
人の言う」

という粋な名文名句が見事に表現され、
さすがに人気作家の片鱗を垣間見ることができます。
エッセイでもありますが、
コピー、ボディコピーでもあるようです。

市川三郎:脚本家、ラジオ作家で、
代表作は「チャッカリ夫人とウッカリ夫人」など。
かって、脚本家・作家の向田邦子さんが、
森繁久彌氏から紹介を受けて市川氏に師事したことがありました。

備考
東都のれん会については、現代も名称はあり、
事務局へ「東京名所名物図絵」について
市川氏がどのように関わっていたかなどについて、
問い合わせをしましたが、
当時の状況を知る人もなく、
当時の会の運営状況も不明とのことでした。

参考文献:
「旅程と費用」
発行:財団法人 日本交通公社
発行日:昭和31年5月3日
*本著の「最初に」によれば、
大正8年に発刊され、戦後復刊後、
昭和31年2月11日までに
新しい市政による都市を集約したものです。
ただ、当時は沖縄は、まだ復帰前で、
沖縄県の掲載がされていません。

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