坂口安吾が小林秀雄論で
問いかけた「物事を見る眼」は、
単なる観察の巧拙を超えた
深い示唆が込められています。
それは、
事象の表層に囚われず、
本質を見極める力を問うものです。
現代の経営は、
スピードと情報量の洪水に
飲み込まれがちです。
市場の動向、競争の激化、新しい技術
どれもが眼前に押し寄せ、
経営者はつい、
目に見える数字や短期的な結果
にばかり目を向けてしまいそうです。
しかし、坂口が問いかけた
「物事を見る眼」は、
それ以上の視座を求めています。
一見ランダムに見える
出来事の中に潜む因果関係や、
人々の心の動きにある
真の動機を見抜く力です。
たとえば、社員が意欲を失い、
業績が停滞しているとします。
ここで表面的な「数字」に基づいて
厳しい目標を課すだけでは、
根本的な問題解決にはなりません。
必要なのは、
なぜ社員が活力を失っているのか
を見抜く「眼」です。
それは、
組織文化の問題かもしれないし、
あるいはリーダーシップの
欠如かもしれません。
本質を見抜く眼があれば、
真の課題にアプローチできるはずです。
坂口が小林秀雄を論じた中で
強調したのは、
答えを安易に教祖や権威に
求める姿勢への批判でした。
経営の世界でも
同じことが言えるでしょう。
成功者のセミナーや
流行のビジネスモデルを
盲信するのではなく、
自らの眼で現実を直視し、
自社の文脈で解決策を
紡ぎ出す覚悟が必要です。
大切なのは、疑問を持つ力、
そしてそれを持続的に
問い続ける精神です。
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